南シナ海でドツボに嵌った中国?

昔は、ちょっとした田舎に行くと、必ず、畑の端に「肥溜め」があったものだ。中国が訳の分からない屁理屈をつけて南シナ海に設定した「九段線」なるものの姿を良く見ると、この「肥溜め」にそっくりだ。

この「肥溜め」の上の方に位置する西沙諸島近海において、石油掘削という名目で実効支配を強化しようと試みたが、ベトナムから猛反発を受けたため諦めざるを得なかった。 なにしろ、中越戦争では、ベトナムにコテンパンにやられたのだから、いくら強面の中国でも、手をひっこめざるを得なかったのだろう。

そこで、次に手を出したのが、「肥溜め」のど真ん中に位置する南沙諸島だ。こんどは、相手がフィリピンだから組みやすしと踏んだのだろう。
案の定、フィリピンがモゴモゴ言い、米国が色々とけん制している間に、あっという間に大規模な岩礁埋め立てを強行し、このほど、これが完了したそうだ。
シリアが化学兵器を使っても武力行使をしなかった、本気で戦う気のない口先だけのオバマなぞ、怖くはないのだ。 後は、港湾や滑走路を整備して実効支配を強化するとともに、いわゆる、不沈空母として周辺の国や日本、米国などに対する威嚇に使うつもりなのだろう。

不沈空母と言えば、中曽根首相の不沈空母発言を思い出すが、もっと古くは、太平洋戦争における日本軍の島嶼作戦は、この不沈空母と化した島嶼を守るためのものであった。
ペリリュー、サイパン、グァム、ガダルカナル、レイテ、硫黄島、そして、沖縄等々における戦いである。
日本軍はこれらの島嶼に建設した飛行場を守って、米軍の本土進攻を少しでも遅らせて時間を稼ごうとした。
一方、米軍はこれらの飛行場を確保して、本土へのB-29爆撃機の発進基地として使おうとした。 いずれも、日本軍が険峻な地形を利用して奮戦したが、結局は、玉砕と言う形で全て失ってしまった。
このように、孤立した島嶼を守ることは非常に難しく、海上の補給路を遮断された後に上陸作戦を行われると、これを撃退することはほぼ不可能に近いと言わざるを得ない。

翻って、中国が埋め立てた岩礁基地は、平坦な土地で隠れる天然の要害もなく水も出ないし食料も調達できない。 その上、中国本土から離れて孤立しているため、水や食料、軍事物資は全て海上からの補給に頼らざるを得ない。
しかも、フィリピンやベトナムによって包囲されている形になっているため、補給路を断たれやすく、守る術もない。
このように、南沙諸島の置かれている地理的環境を考えると、軍事的にはそれほどの価値があるとはとても思えないし、逆に、お荷物になる可能性だってあるのだ。
敵に簡単に占領されて、折角作った滑走路も、中国本土に対する作戦基地として利用されかねないのだ。

外交的には、周辺国に対する威嚇のための一つのカードとして使えるかもしれないが、これらの基地を維持管理するためには、莫大な経費や軍隊を投入する必要があり、それを今後、永遠(共産党政権が続く限り)に継続しなければならいのだ。しかも、国際会議のあらゆる場において非難され続けながら。 既にピークに達し下降に転じた中国経済は、こうした負担に耐えることが出来るのだろうか?この愚挙は、しだいにボディブローのように中国経済や社会を蝕んでいくのだろう。

そして、中国が威嚇の度合いを強めれば強めるほど、周辺諸国の反発が強まり、米国の「リバランス政策」の正当性を強化し、ベトナムやフィリピンへの米軍の駐留へと繋がって行く。
これによって、政治的にも地政学的にも反中国包囲網が形成され、中国がアジアで一層孤立し、それはやがて、反中から排華(中)へと向かうだろう。
また、TPPによって「円・ドル経済圏」が形成されれば、経済的にも太平洋地域から排除されてしまう。

かといって、メンツ上、今更、引きあげるわけにもいかず、目先の利益に捉われて軽はずみに行った行為が、ニッチもサッチも行かなくなる結果をもたらすことになろうとは・・・・。
中国の軍人達は、してやったりと得意満面だろうが、長い目でみれば、正に、自業自得、天に向かってつばを吐く行為に他ならない。中国は自らドツボに嵌ったのだ。