「一帯一路」にクサビを打ち込んだ安倍中央アジア歴訪

習近平が7兆4千億円もの大金を大盤振る舞いして、金ピカの馬車に乗せてもらい、キャメロンとパブでビールを飲んで、ご機嫌になっていた10月22日、安倍首相はモンゴルを訪問し、積極平和主義への支持をとりつけるとともに、資源開発や鉄道建設の協力など経済協力強化で一致した。

そして、翌23日以降、中国の裏庭である中央アジア5か国(トルクメニスタンタジキスタンウズベキスタンキルギスカザフスタン)への歴訪を開始した。

最初の訪問国トルクメニスタンでは、天然ガスプラントなど総額2兆2千億円以上の大型案件の受注に成功した。

次の訪問国、タジキスタンでは、ODA8.6億円の支援を表明する一方で、日本の平和国家としての戦後の歩みに対する評価を得たばかりでなく、日本の常任理事国入りの支持をとりつけた。

さらに、親日国として知られるウズベキスタンでは、産業多様化や人材育成に協力するとともに、127億円のODA供与を行うことで合意した。
その一方で、「中国公船による領海侵入や一方的な資源開発など、中国の憂慮すべき活動は依然継続している」と、中国を名指しで批判した。

これに対し、カリモフ大統領は、「日本人に対しては敬意をもって接している」、「最も透明で効率的な動きをしているのが日本だ」と評価することによって、中国に対する批判に暗黙の支持を与えた。

ロシアとの関係が強いキルギスに対しては、交通インフラの整備に約136億円のODA供与を表明するとともに、議会制民主主義への定着支援を約束した。

最後の訪問国カザフスタンでは、原子力発電所の建設に向け、協力関係を強化することで合意した。

これら中央アジアの国は、元々、親日であることもあり、日本の積極平和主義に対する支持の表明や、日本が積極的に関与することに対する期待の高さは、カネにモノを言わせて強引に事を進めようとする中国とは一味違った、日本ならではのきめ細かい人的支援や技術支援に対する高い評価の表れであろう。

トルクメニスタンを除く4か国は、AIIBに加盟し、中国の「一帯一路」構想の中核をなす国々であるが、中国に対する過度な依存を避けるためには、日本との関係強化は必須であり、その点では、今回の安倍首相の歴訪は、中央アジア諸国にとっては、正に、渡りに船であったろう。

いくら中国が、「一帯一路」構想を提唱して、強引に中央アジア諸国を勢力圏に取り込もうとしても、ウインウインの関係にならない限り、我々は「そう簡単には、中国の思うとおりにはなりませんよ!!」と旗幟鮮明にしたのだ。

日本が供与するODAの総額は約272億円で、7兆4千億円とは比較にならないほどの少額であるが、今回の歴訪で得た成果は、地政学的にみても計り知れないものがある。また、2兆2千億円以上の受注に成功しており、そろばん勘定としても大幅な黒字だ。

 そして、何よりも、他国に対する支援は、お金の額ではなく、中身が大切だということだ。いくら大金をつぎ込んでも、その国の利益にならないのでは、感謝や尊敬を得ることが出来ず、トブに金を捨てるようなものだと言うことを、今回の歴訪が証明した。

「金で人の心は買えない」、この格言を中国はもっと噛みしめるべきだろう。

 7兆4千億円で英国の買収に成功したと有頂天になっている間に、人の懐に(中央アジア)手を突っ込んで引っ掻き回した安倍首相の歴訪は、訪英の成果に冷水を浴びせ掛けるものであり、習近平にとっては「安倍のヤロー、えげつないことをしゃーがって」と言ったところであろう。

 おりしも、「5中総会」が開催されたタイミングを狙ったかのように、10月27日、米海軍は南シナ海での巡視活動開始を公表した。

 一方、どちらかと言うと中国寄りであったインドネシアはTPPへの参加を表明し、タイも検討を始めた。

かくして、太平洋では経済のみならず軍事面でも中国包囲網が形成されつつあるのだ。後先を考えない軽率な岩礁埋め立てが、益々、中国を窮地に追い詰めようとしている。