所詮「裸の王様」だった!?中国

11月23日、ASEANは、21日にマレーシアで開催されたASEAN首脳会議の議長声明を発表した。


その内容は、南シナ海問題では人工島の軍事化に対する懸念、航行の自由の重要性、国際法に沿った平和的解決、常設仲裁裁判所の審理に中国が応じるよう促すものであった。


首脳会議の場において、これまでは、中国に配慮して中立的な立場を取ってきたインドネシアシンガポール、マレーシアを始め各国は、「域外国の関与を排除すべき」との中国の主張に反対したのみならず、中国に対して国際法尊重と自制を求めたのである。


これは、ASEAN諸国が従来の対中姿勢を大きく転換して、日米両国の主張を全面的に受け入れるものであり、それは、即、中国がこれまで推進してきた強圧外交の敗北を意味するものであった。


中国はこれまで、カネと力を武器にして、ASEAN諸国に対して個別の外交攻勢を行うことによって、圧力を掛け、取り込みを図って来た。


その結果、11月4日の拡大ASEAN防相会議での共同宣言採択見送り、19日のAPEC首脳会議における首脳宣言での採択阻止と、南シナ海問題では対中包囲網の形成阻止に成功してきたが、その努力が水泡に帰したのである。


横柄に構えて、「そんなに会いたいなら、会ってやる」式の上から目線で、一方的に自己の主張を相手国に押し付けようとする習近平式、いや中国式外交の限界が露呈した格好である。


なぜ、ASEAN諸国は対中姿勢を転換したのであろうか。その根底にあったのは、もし、このまま中国の跳梁跋扈を許せば、いずれは、「九段線」への主権拡大へと発展し、それは、南シナ海に面する国々の主権侵害に発展しかねないという危機感であった。


また、安倍首相とオバマ大統領がタッグを組んで、積極的な首脳外交を展開して、中国に対する危機感の共有を図ったことも大きい。


この過程を通じて、米国は、人工島に対する巡視を継続して南シナ海への積極的関与を約束するとともに、海洋防衛能力向上を支援することで「リバランス政策」に対する信頼性向上を図った。


また、日本はODAの条件を緩和することによって、ASEAN諸国が過度に対中依存をしなくてもすむ道筋をつけた。


そして、TPP参加12か国の首脳会議を行って早期発効へ努力することで合意し、台湾、フィリピン、インドネシア、タイ、それに、なんと中国の属国韓国までもが参加への関心を表明したことで、存在感の大きさを見せつけた。


これで、アジアの経済圏はTPPをベースにする流れが決まり、これが、ASEAN10か国による経済共同体への年内発足へと結実した。


その煽りを受けて、中国が参加するRCEPは先送りされ、中国が主導で進めようとしているFTAAP構想などは、どこかに吹っ飛んでしまった。結局、中国はアジアの経済圏から仲間外れにされてしまい、ASEAN諸国はカネに縛られて、中国の顔色を窺う必要がかなり低下したのである。


22日、安倍首相がインドネシアのジョコ大統領に、高速鉄道の結果に失望を表明し、選定過程の透明化を求めたのに対し、黙って「大きくうなづいた」と伝えられているが、これは、もう中国に過度な配慮はしないという暗黙のサインであろう。


さらに、ASEAN各国首脳は、日本を「キーパートナー」と評価すると共に、質の高いインフラ整備や人材育成に関する協力に感謝の意を表明し、積極的平和主義への支持も表明した。


これは、いつまでも歴史問題を持ち出して、日本を貶めようとする中韓に対する当て擦りであり、中国が日本非難の常套句として使う「アジア諸国」には、ASEAN諸国は含まれていないこと、ASEANは日本と行動を共にすることを宣言するものであった。


そう、中国は自分をアジアの盟主と思い込んでいた「裸の王様」だったのだ。