トランプ大統領誕生に備えて核武装論議を

瓢箪から駒」ならぬ「瓢箪から怪獣」が出てきたのが、米国の大統領予備選挙だ。

これまでの米国の国是を完全に否定するトンデモ発言を繰り返し、最初は、その内消え去るだろうと泡沫候補扱いだったが、余りにも刺激的な発言をするためマスコミが大きく取り上げたことによって、逆に人気が上がり、あれよあれよという間に、並み居る候補者をなぎ倒して、気が付けば対立候補がだれもいなくり、共和党候補としてほぼ確定してしまった。

一般大衆が抱いている生活や政治に対する不満をピックアップして、自分なら全てを解決できるとマスコミを通じて執拗にアジルことによって、一般大衆は、トランプなら本当に実現してくれるかもしれないと錯覚したのだ。ちょうど、オバマが「チェンジ」と叫んで大統領になったように。

「チェンジ」の内容が具体的にどのようなもので、どのようにチェンジをするかを深く吟味することなく、大統領に選んだことによって、中国を増長させて南シナ海への進出を許し、ロシアにクリミアを奪われ、ISを誕生させてテロを世界中に蔓延させ、ついには、世界の警察官としての役割を放棄してしまった。

これと同じように、トランプ氏の口から飛び出すトンデモ発言は、相互の関連性や実行の可能性、世界の秩序に及ぼす影響を全く無視した、ヒトラーを彷彿させる究極のポピュリズムであり、アジテーターなのだ。

最も懸念されるのは、世界の警察官どころか、軍事面での関与も否定したことだ。

もし、米軍がアジアから撤退すれば、当然、日米安保条約は破棄され、それに伴って、第2次朝鮮戦争、中国の台湾侵攻、尖閣のみならず沖縄に対する侵攻、南シナ海の完全支配、そして、第2列島線の確保へと発展し、太平洋の西半分は中国の勢力下に置かれることになる。

その結果、米国の太平洋における最前線は、韓国~日本~台湾~フィリピンから、グァム~サイパン~ハワイの線に後退し、米国の威信や影響力は著しく低下し、超大国から普通の大国になってしまうだろう。

日本は、中国との戦争を覚悟するか、中国の軍門に下って、尖閣を放棄した上に、沖縄に中国軍の駐留を認めるかの二者択一を迫られることになる。

もし、日本が前者の道を選ぶなら、憲法改正は当然のことながら、防衛費を大幅に増大して自衛隊を増強し、核武装をしなければ、中国の軍事的脅威に自力で対抗できなくなる。

トランプ氏は、在日米軍の経費を全額負担しなければ撤退させると明言しているが、現在、日本が負担している経費は、74.2%の7,200億円だが、これを全額負担するとなると、9,700億円と約1兆円になる。

もし、日本が自主防衛力を整備する場合は、最低限、防衛費は現在の2倍から3倍にしなければならないから、そのために必要な経費は10兆円~15兆円に上る。また、兵員不足を補うため、場合によっては、徴兵制も検討しなけばならないだうろ。

そう考えれば、1兆円で済むのなら安いものかもしれないが、国民の理解を得るためには、米国に尖閣を日本の領土と認めさせ、有事の際は、在日米軍自衛隊の指揮下に入れるくらいの要求をしなければならないだろう。なにしろ、在日米軍は、従来の「ガードマン」から「雇兵」へと変わるのだから。

 

いずれにしても、トランプ発言は、日米安保核武装も含めた自主防衛のありかたを見直す絶好のチャンスではあろう。