タガをはめられた?トランプ暴言

根拠や整合性のない自分の主張や願望を一方的にまくしたて、都合の悪い質問には偽ニュースだと罵倒して質問を遮り、子供のケンカの場と化した1月11日の記者会見を見て、世界中に失望と不安が広がった。

 

最早、棺桶に半分以上足を突っ込んだ70歳のジイさんに、もっと大統領らしく振る舞え!!発言は慎重にしろ!!などと説教したところで、当の本人は聴く耳を持たないし、直そうという気もないのだろう。

 

これから4年間、こうした暴言を聞かされて、世界中が振り回され、混乱させられ、その結果がどうなるかを考えるだけで空恐ろしくなるが、現実として受け止めざるを得ない。

 

その一方で、同時期に行われた指名承認公聴会における重要閣僚候補の発言を見る限りでは、そうは簡単に、トランプ大統領の思う通りにはならないのでは、と思わせられる発言が相次いだ。

 

国務長官候補のティラーソン氏は、「尖閣」が日米安保の適用対象であり、「TPP」も反対ではないと明言した。

 

また、国防長官候補のマティス氏は、「強力な同盟国を持つ国家は繁栄し、それがない国家は衰退すると」と同盟関係の強化を訴えた。そして、両氏とも、ロシアに対し強い警戒感を表明した。

 

これらは、TPPを否定し、同盟関係すら経済的な損得勘定で取引し、ロシアに対する近親感を隠そうとしないトランプ氏の主張とは明確に一線を画するものであることから、トランプ氏にとっては出鼻をくじかれ、手足を縛られた格好だ。

 

尖閣」を人質に経済問題の大幅譲歩を迫られる心配が無くなったことは、日本とっては一安心と言ったところだろう。

 

また、安倍首相が、フィリピン、オーストラリア、インドネシアベトナムを歴訪して、東シナ海の海洋安保のために、米国との連携強化の同意を取り付けようとしていることも、トランプ氏にとってはプレシャーとなるだろう。

 

理屈よりも敵か味方を峻別して、それに応じて態度を変えるトランプ氏に対して、我々は、あなたの「味方」ですよとアピールしているのだから。

 

そうなると、トランプ政権の攻撃の矛先は、まず、「敵」である中国に向かいそうだ。

東シナ海を軍事要塞化」している、「中国は経済で米国を食い物にしている」と敵愾心を露わにし、「1つの中国」に疑問を呈することによって、交渉の切り札として使おうとしている。

 

海洋進出の象徴として埋め立てた人工島が、法的のみならず、軍事的には致命的な欠陥を持つがゆえに、最大の弱点となって、習近平を苦しめることになりそうだ。

 

それにしても、なんでこんな時期に、実戦では使い物にならない空母を太平洋に進出させ、台湾を一周させたのかね?

 

これでは、米国の対中姿勢を一層硬化させるだけだ。もし、その報復として複数の米空母が人工島周辺に展開して居座ったら、どう対応するのだろう。

 

いつまでも、ちょっと脅せば相手は引っ込むだろうと勘違いしていると、大やけどをしますよ。

 

何しろ、口先だけで、何もしなかった理想主義者のオバマ大統領とは違い、超現実主義者で何を考えているか、何をやるか分からない相手なのだから。老婆心ながら一言。