トランプ大統領の「心臓」を掴んだ?!安倍シンゾウ

「毒を喰らわば皿まで」と言うが、2月10日からの安倍首相の訪米は、正に、これを地で行ったものだろう。

米国内のみならず世界中からも警戒され、非難され、孤立気味のトランプ大統領とサシで2回目の会談をするどころか、ゴルフまで付き合うというのだから、世界中が驚いたのも無理はない。

何かトンデモナイ要求をされるのではないか?折角、うまい具合におぜん立てした尖閣や米軍駐留経費問題を、鶴の一声でひっくり返されるのではないか?と疑心暗鬼であったが、そうした懸念は全くの杞憂であった。

尖閣は5条適用を明言したどころか、米軍駐留に感謝の意を表明したのみならず、貿易赤字や自動車問題に対する批判を封印し、TPP参加にも含みをもたせるなど、期待以上の満額回答を得たことは大成功と言えるであろう。ようやく、仏に「魂」が入ったのだ。

これに花を添えるかのように、12日には、北朝鮮がミサイルを発射してくれたことにより、安倍首相の非難声明発表にわざわざ立会して、同盟国日本に「100%支持する」との発言は、安倍首相にとっては、まさに訪米成功に対する「祝砲」とも思えたことであろう。

今回の訪米の最大の山場は、10日の首脳会談よりも、11日午後の余人を排して行われた9ホールのゴルフであった。

2人でゴルフを行いながら、本音で語り合ったことは間違いないだろう。外交関係では、中国、ロシア、北朝鮮に加え、韓国、ベトナム、フィリピン、インド、さらには、イランやエルサレムへの米大使館移転問題も話題なったかも知れない。

そして、安倍首相がこれまで会った各国首脳に関する情報も伝えたことであろう。

政治や外交経験のないトランプ大統領にとっては、目から鱗、大いに学ぶところがあったことは十分予想される。ここで大切なことは、全て、安倍首相と言うフィルターを通しての考えであり、意見だということだ。

すなわち、日本側の解釈を白紙状態のトランプ大統領にインプットすることが出来たこと、これが訪米の最大の成果であろう。

また、トランプ大統領にとって最大の関心事である米国内の雇用問題については、公式の階段では触れなかった、51兆円のインフラ投資と70万人雇用の実現を約束した可能性もある。

トランプ大統領にとって、この9ホールでの話し合いは、十分に得心し、満足するものだったのではないか。そうでなければ、わざわざ立会し、用意された原稿も見ずに「100%支持する」なんて言うわけがない。

通商問題については、ペンス副大統領と麻生副総理との間で詰めを行うことが決まったが、これをどう実現するかの具体策が話し合われることになるのではないだろうか。

一部マスコミでは、レーガン時代のように無理難題を突き付けてくのではないかと懸念する声があるが、この時代とは背景が全く異なる。

日本の市場は十分に開放されているし、対日貿易赤字も世界2位とはいえ、中国の3470億ドルに比べれば、689億ドルと1/5に過ぎない。

また、すでにTPPという土台があり、これに肉付けをすれば良いだけなので、合意に達するのは、当時に比べればそれほど難しいものではない。

場合によっては、実質的にはTPPに参加する可能性だって有りうる。

「黒船」体質が抜けない日本にとって、トランプ旋風はピンチでもあり大きく変身するチャンスでもある。こうしたピンチを乗り越えて日本は強くなってきたのであるから、大変ではあるが、もっとポジティブに捉えるべきだろう。

いざとなれば、中国に展開している工場を米国に移せば良いのだ。これに、新幹線かリニアを米国内に建設すれば、雇用問題はかなり改善されるだろう。

後は、日本の防衛力の強化だ。米側の本音は、もっと日本は防衛力を増強して、アジアにおいて軍事的役割を果たして欲しいということだ。

そのためには、少なくとも、尖閣を独自で奪回できる能力、中国海軍を東シナ海に封鎖する能力、敵地を攻撃する能力、この3つを身に付けることが必要であろう。

そうすれば、アジアにおける米軍の負担は減少し、再び、世界の警察官としての役割を果たすことが出来るようになるだろう。

日本は米国の前に立たず、半歩後ろに下がって、しっかりとサポートすれば良いのだ。武田信玄山本勘助、秀吉の黒田勘兵衛のように。

それにしても、安倍さんは運の良い人だ、そして、「死中に活を求め」て難癖のトランプ大統領と親交を結ぶことに成功したことに、心からの感謝と、「お疲れさまでした」と労いたい。