金正恩排除の始まり?

2017年3月7日、ハンソル氏を名乗る男性の動画がユーチューブに公開された。

その動画は、脱北者の支援団体を名乗る「チョルリマ民間防衛」のホームページに掲載されたもので、時間は僅か40秒と短かったが、この動画で語られた話の内容は、重要な意味をもつものであった。

まず、「北朝鮮から来た。キムファミリーの一員だ」として、自分が白頭山の血統を受け継ぎ、北朝鮮で最高指導者になりうる正統な資格を有する者であることを明確にした。

次いで、「父は数日前に殺害された」として、2月13日にクアランプール空港で死亡したのは、「キム・チョル」という北朝鮮人が「心臓麻痺」で死亡したという北朝鮮側の主張を明確に否定した。これにより、北朝鮮側の主張は虚偽であることが立証された。

しかも、「数日前」と言うことは、マカオに潜伏していると考えられていたハンソル氏の一家が、早くも、暗殺事件発生から数日後には、安全な場所に保護されたという事実が明らかななったことだ。

これほど、迅速な対応ができることは、安全な場所に移すことを中国政府が同意し、背後にかなり大がかりな組織が動いたことが窺える。

移動を支援してくれたとして、オランダ、中国、米国の政府、それに、もう1つの匿名の政府(おそらく韓国)に謝意を表明したが、その中に、中国が入っていたのは当然だろう。

動画では音声が伏せられていたが、支援した人物として名前を挙げられた韓国駐在のオランダ・エンブレフツ大使が、仲介の労をとったことが窺えるが、注目すべきは、米国政府が含まれていたことだ。

このことから、今回のハンソル氏保護の行動は、この4か国の合意の下に実行に移されたのだ。

現在、ハンソル氏一家がどこにいるか不明であり、台湾、マカオオランダ大使館内、あるいは、すでに米国内に居るなどの憶測が飛び交っているが、いずれにしても、少なくとも中国の手を離れ、米国の手の及ぶ所にいることは間違いないようだ。

すなわち、米国は金正恩に成り代わる資格を持ったハンソルという「玉」を手に入れたことになる。

国際社会からの激しい非難に耳を貸さず核武装やミサイル開発を継続し、多数ミサイルを発射して威嚇するのみならず、母違いとは言え兄を暗殺するという常道を逸した行為は、最早、国際社会が我慢する限界を超えている。

このままエスカレートしていけば、日本の領海内にまでミサイルを撃ち込むか、核までも使いかねない。この危機を回避するためには、癌の摘出手術、すなわち、金正恩個人を排除するのが最良の方法であろう。

おりしも、国際銀行間通信協会(SWIFT)は、北朝鮮の銀行にネットワークの利用を禁止する処置をとった。これによって、北朝鮮は資金の移動が出来なくなり、金融面で国際社会から遮断されてしまった。

人、物、金の3方面から包囲され、さらに、軍事面では韓国にTHAADを配備して対抗策を講じられ、いよいよ、北朝鮮はどん詰まりになりつつある。

中国も、いつまでも北朝鮮の肩を持つと、北朝鮮と同類と見なされて国際社会から非難されかねない、かといって、軍事行動もリスクが大きいし、体制が崩壊して大量の難民が押し寄せるのも困る。

残された手は、金正恩だけを取り除いて、ハンソル氏にすげ替えるしかない。今回の動画公表は、その第一歩を開始したことを宣言したのかもしれない。