TPP大筋合意は習近平とプーチンのおかげ?

1814年のウィーン会議における「会議は踊る、されど進まず」の再現を思わせるTPP閣僚会合も、延長に次ぐ延長で、ようやく、10月5日、大筋合意に達した。

7月末の会合では、NZが乳製品の輸入拡大を巡って強硬姿勢を崩さなかったため、合意に至らず、これで、TPPも長期漂流かとあきらめムードが漂い、この時、僅か3ヶ月足らずで合意に達するとはだれが予想したであろうか。

今回の会合において、12か国が共通認識として持っていたのは、中ロに対する「危機感」であろう。

中国においては、公約としている7%の成長は絶望的な経済減速、治安が比較的安定していた、南部における連続爆破事件に見られる治安の悪化と国民の不満の増大、こうした、国内情勢の悪化から国民の目を反らすために行っている、段平を振りかざしての強引な海洋進出。

その一環として行っているが、南シナ海埋立地の軍事基地化と東シナ海尖閣侵入やプラットフォームの建設だ。

片やロシアは、クリミア半島を併合し、ウクライナ東部に軍事介入したことにより、ウクライナのみならず東欧諸国を益々EU側に向かわせてしまったことにより、西への発展の道が閉ざされ、必然的に東と南に目を向けざるを得なくなった。

北方領土への頻繁な要人訪問、ウラジオやサハリンにおける極東開発、サウジやエジプトへの接近、そして、シリアへの軍事介入である。

この2か国が目指すのが、太平洋への進出だ。9月25日のオバマ・習会談、28日の安倍・プーチン会談において、中ロ両国は、その意図を明確にした。

こうした一連の経緯を見て、TPP参加12か国は、太平洋における「新冷戦時代」の幕開けを実感したことだろう。

中ロの太平洋進出を阻止し、中国の経済減速+国内の混乱に巻き込まれないためには、最早、国益優先のゲームをやっている場合ではない、多少譲歩してでもTPPをまとめ、12か国が結束することが喫緊の課題であると悟ったのだ。

今回の合意によって、太平洋に世界のGDPの40%を占める巨大な「円・ドル経済圏」が形成される。

これによって、中国とロシアに対して、経済障壁を設けることができるのみならず、経済連携は、やがて政治や軍事面での連携へと発展し、一種の運命共同体的な同盟国としての役割を果たすことが期待され、これによって、はじめて、中ロの横暴に結束して対抗できるようになるのだ。

その意味において、今回の大筋合意は歴史的な快挙なのだ。その後押しをしてくれた、習近平プーチンに感謝すべきであろう。

今後、太平洋における経済の重点は、中国からTPPに移行し、日本のみならず、周辺国の中国離れは一層加速するだろう。

また、2邦人のスパイ容疑逮捕は、外国人にとって、中国が安全な国ではないことを立証した。スパイ容疑を理由に簡単に逮捕されるのだから、安心して仕事などできるものではないからだ。

ロシアも北方領土を含め、いくら極東を開発したとしても、日本の協力を得られない上に、TPPの障壁に遮られてしまうため、期待したほどの効果は上げられず、無駄な投資に終わる可能性が高いのだ。