北朝鮮の核・ミサイルの真の脅威とは?

北朝鮮が当初の予告を1日前倒しして、2月7日、ミサイルを発射した。ミサイルは大気圏外に物体を放出して周回軌道に乗せたことから、成功したと言えるだろう。

日本はイージス艦を配置するとともに、PACS3を地元の調整を待つことなく見切り出港させて先島諸島に向かわせ、発射の3時間前に迎撃態勢を完了した。

また、前回はうまく作動しなかった「Jアラート」も、今回は発射3分後には警報を発信することが出来た。

現在時点において、日本が対応可能なミサイル迎撃対処の態勢は、一応、うまく機能したと言えるだろう。

しかし、日本にとっての真の脅威は、日本本土を射程に収め、しかも、発射位置の特定が困難な移動式ミサイルのノドン(射程1300km)やムスダン(3000km以上)の存在だ。

すでに、ノドンは約200基保有していると言われており、現在の自衛隊の能力では到底対処できない。このため、イージス艦やPACS3の更なる増強と、場合によっては、敵地攻撃能力を備えることも必要になってくるだろう。

韓国側の発表によると、射程は1万2000~1万3000kmとのことだから、これは、米東部海岸のワシントンにまで届く距離だから、米国にとっては大きな脅威だろう。

その割には、米国の反応には切迫した危機感が感じられない。ケリー国務長官は重大な挑発行為だと非難したが、従来の主張を繰り返しただけで迫力に欠けるものだ。

本来であれば、米国内において、先制攻撃論が噴出してもよさそうなものだが、それを主張したのは、今のところ、大統領候補のブッシュ氏だけだ。

長距離弾道ミサイル発射と言っても、地下サイトではなく、東倉里の露出した地上の発射台からなので、いつでも攻撃して破壊することが出来るため、さほど深刻な脅威ではないと捉えているのだろうか。

韓国にとっては、中国の北朝鮮に対する宥和的な態度と、中国の影響力が期待したほど大きくないことが明らかになったことにより、従来の中国寄り政策を大きく軌道修正せざるを得なくなった。まさに、コウモリ外交の本領発揮だ。

これまで中国が反対してきたTHAADの配備はむろんのこと、日本との防衛協力の一層の強化を迫られることになる。北朝鮮中韓離間政策はまんまと成功したわけだ。

今回の核・ミサイル騒動で一番割を食ったのは中国だろう。経験不足の若造だから、うまく言いくるめれば、思いのままになるだろうとタカをくくっていたところが、度重なる警告を無視して核実験とミサイル発射を強行したのだから、メンツ丸つぶれで、世界中に恥を晒してしまった。飼い犬に手を噛まれるとはこのことだ。

それでもなお、中国が北朝鮮を庇う姿勢を続けるのは、核もまだ初期段階で、ミサイルも日米韓に向けたものであることから、許容の範囲内なのかもしれない。

金正恩にしてみれば、経済は行き詰まり、相談しょうにも信頼できる側近はいない中で、体制維持のために唯一取り得る手段は、父親の遺産である核とミサイルを使って権力基盤の強化を図る以外に方法はないのだろう。

EUは難民問題で手いっぱい、ロシアは高みの見学、国連は「会議は踊る」状態で何も決められず、米国は大統領選に関心が集中し、レイムダックと化したオバマ政権は中国を説き伏せるだけの力はなく、韓国は対中から対米へと軌道修正で大わらわ、日本は政治とカネ、TPP、参議院選対策、それに拉致問題もあって独自制裁も中途半端にならざるを得えない。

シリアの大量難民を見るにつけ、北朝鮮を追い込んで暴発、あるいは、崩壊させることは出来ない。

これが米中のみならず、日韓の共通認識であろう。結局、制裁は中途半端に終わり、北朝鮮核武装化は着々と進むのである。

そして、いつの日にか、北朝鮮の核・ミサイルが米国にとって真の脅威(核のミイサル搭載、大気圏突入能力、地下サイトからの発射、SLBMの実戦配備etc)と化した時、ABCD包囲とハルノートによって窮地に追い込まれた日本が、対米戦争に踏み切らざるを得なかったように、北朝鮮も暴発へと誘導させられるのであろうか。

いや、それよりも前に、中国が軍事介入して金正恩体制を崩壊させるかもしれないが。

いずれにしても、戦争の危機は着々と近付いているといわざるを得ない。日本は辺野古で揉め、憲法改正に躊躇している暇はないのだ。